2015年5月29日金曜日

明治美術学会の「近代画説」







早稲田大学文学部内に事務局のある

「明治美術学会」の基幹誌だ。

ときどき、論文を読んでいる。

明治以降の画家たちの作品解釈や

掘り起こされたエピソードはひどく面白いのだ。

学会誌である以上、内容は高度だ。

書籍を読むことも、学会誌の論文を読むことも大切な作業だ。

ひとつのテーマについて、10本も集めてみると、

おぼろげな全体像が理解でき、

真贋判断の視点も、構築できる。


2015年5月28日木曜日

祝詞を覚えて、奏上する。



俳人の五島高資さんは、自らのルーツを探るために、

長崎県の五島列島を回ったそうだ。

それは今も続いているが、

回りながら、島々のお社を、それこそ無人のお社を訪れて、

祈ったんだそうだ。

きちんと祝詞を奏上したという。

そのように、お社を巡ることが後々、

五島さんに力とインスピレーションを与えたんだそうだ。

Facebookの俳句大学では、毎日、五島さんがコメントしている。

質問にも応えている。

時に、お社めぐりのことを話す。

そのなかから、祝詞奏上の、現実的な力を知った。


筑波大学の柳田優子先生によると、

延喜式祝詞がおさめらている最古のものは、九条家本(東京国立博物館蔵)であり、平安時代後期の写本。祝詞は、江戸時代の国語学者により本格的な研究が行われ、賀茂真淵著『延喜式祝詞解』(1746)、その後これを改訂した『祝詞考』(1800)、また、賀茂真淵の門下の本居宣長の『大祓詞後釈』(1796)『出雲国造神寿後釈』(1793)など。

写真は、

大正時代の有朋堂文庫「古事記風土記祝詞」の

「春日祭」の頁。

きのう触れたように、注釈という作業を進めながら、

古代日本語を感じ取り、

神宮で、静で、

祝詞を独自に奏上すべきだという思いが持続する。





遇々5月28日


   遇々 

たちばなの古代帰化びと名はじゆりえつた
秦氏すむむらほそみちにじよちうぎく
追われし帰化人は前方後円墳のうへにすむ梵天として
風鈴のよひ砂鉄ならばよひ音なる
したたかにうちのめされて虫線香

速度うしなへばうとまれるつゆにいる
いつものあかではなひ夏ゆふぐれと痴呆とが並んでゐる
目みへぬゆめばかりみて夏座敷
学問をうしなひさまよふ草城句痛みかな
錆びた鉄工所残されし砲金夏果つ

雨音聞きとまと食ふ庭窓は黄金比
 講堂の幻燈絵明るく校庭は黒夜
湖の底の土器を拾ふ惑星からとどくひかりで
浅ひかりがらす皿にレタスが包む溜息

  ∵
あぼがどのかたき種皮をわりやがて
凌駕するかやはらかきあをが
  ∵
たちばなの古代帰化びと名はじゆりえつた
うすあかむらさきの山脈のふもとに
  ∵
梵天なる前方後円墳うへに住む帰化びとら
追われし2千年もくれるなつそら
  ∵
秦氏なる帰化びと住めるむらほそみち
除虫菊咲けりもとの絹道は遠くて

2015年5月27日水曜日

注釈



実作と論は両輪だ、と詩人が言う。

2013年俳句年鑑の藤田真一さん「俳文学展望ー学会誌の課題」を読む。

注釈への視点という項。

本居宣長の「古事記伝」によって、江戸期のひとびとが、古事記を理解できるようになったこと。

本居宣長はだから、古代言語と思考を理解できた超人だ。

幸田露伴は、「俳諧七部集」の注釈に精魂を傾けた。

全作品に注釈を施している。

翻って、注釈とは、一聞、地味ではあるものの、

「作品にあたらしい息吹をふきこむ原動力だ」だ。

論を築くために、注釈はいのちのようなものだ。

2015年5月25日月曜日

偶々5月24日



    偶々

清和なるすずかぜたちぬ静の神
血にあふて素粒子ざわめく首夏かな
 (以上静神社にて。中世常陸国佐竹氏同族の古ひ血、宇留野氏と邂逅す)
香一柱たてて夏断の八卦堂
八卦堂臍に常陸国は夏を呼ぶ
傘雨忌やみづもゆふべもあなたより

ゆふぐれのそのてつせんの濃むらさき
あをな煮てくずみゆくあをおしみけり
あをうめをあさはやきあめぬらしけり
あをふかきなかにぼうたんひとつかな
あをりんごあをは酸味の暗喩かな

しらたまのその手のこうのしろさかな
にほんじうの妙見山で砂金採るんだきつとあるから
  (大子町金沢にて。妙見信仰は金属資源発見技術のひとつか)
あぶくまのはなたちばなに雨意ちかし
あをいごぐあつ相場師の部屋もあをにそまるの
夏の燈やあなたのいのちおとろへず

せつきやうくさきぼうずの句などどぜうなべ
あを驟雨よろこべる子らやまのむ
夏至の夜にたまいれをせむ八卦堂
夏ごもり八卦堂うちにて智恵を愛く
八卦堂まんなかにたちて知恵を愛く

静の神清和の風の知らせあり
夏至の夜の常陸国の臍八卦堂
あぶくまのはなたちばなに雨意ちかし
ごぐあつのあをは相場師の部屋も染めてゐる





2015年5月18日月曜日

遇々5月17日



たかはらのはるぜみいつせい空耳や
なつだいこん煮てにちやう饗すかな
しらたまやわづかな時ををしむべし
一葉忌その十一か月をわれにもと
そら豆を茹でていねいに生きたしと





2015年5月16日土曜日

遇々




うすものをかぜ透り過ぐゆふべかな
あるてみしにん噛むでこんちくせうとあふぐ (よもぎ成分)
ひたちのの夏野をゆきてみちたてる
片蔭のつまこころぼそげなよこがほや
あをつゆの常福地てふ村窓深し

にしびなか金輪のなかつまはをり
あさぐもりごくあいばかりのてがみ捨つ
夏座敷一語つたへてもどりくる
蓬春の栗鼠の瞳に青葉闇        (山口蓬春を入手す)
薔薇垣をすぎいひわけはしまひけり
 
こばるとのそうだすい透ひてゐるかあをいろか
銅の神だんだんぶだうばたけをおりきたり 
にれのもと香水瓶うめのち術つかふわれ
ほうじゆうは罪つるばらのうへ黄蝶とぶ
やまぶだうとあけびの蔓を採るしごとしてゐるんだ

こばるとのそうだ少年湖水の記憶をゆるす
湖の底の土器を拾ふ惑星のやうにをどる水
浅いカリガラスの皿レタスが包む溜息
窓辺にて外へと指しまねくはるにれの梢
あのかたは築地の崩れと蓬を超へて撫子を

花篭はたちまちゆきくれて東宮へ
種を洗い数日亀裂が硬質を凌駕すあぼがどのやわらかさ
野草同好会のおじさん五月闇に消へた
本棚の本のしじまのむかふ梅林が滲んだ
いつもの赤ではない夕暮れと痴呆とが並んでゐる

錆びた鉄工所で残されし砲金の触感夏果てる
雨の庭の音を聞いてとまと食ふ窓枠が黄金比の
廃線跡に鉄はすでになくて油蝉
梅雨はいつも庭に白磁の皿ある日靄立てり

あさつゆのいのちは半刻だよ
万葉仮名で万葉を読む異人としての
下し器もすりへりにけりなつだいこん
講堂の幻燈絵にはなやぐ夏夜かな
講堂の幻燈絵会校庭は漆黒の夏夜

蛍の夜となりのくりにんぐ屋だけ知りけり
ゆふぐれのそのてつせんの濃むらさき

2015年5月12日火曜日

遇々





あおうめや山名文夫はまだ売れぬ
なつかぜにのりて売り子の香りかな
にしぞらにきんもくすいと立夏過ぐ
金土日五日づつある五月に入る
しきつめしぼたんざくらの花弁かな
さくらもちとほりすがりにわけにけり
額田なる砂鉄のをかはなつのかな
あおうめのふくらみゆける雨の中
ふようさいてかぜもふえたりふほうあり
わかばあめのがしてならぬもののあり
ゆふかぜのしずかにふいてひとをまつ
夕蘭やそのてのひらのやはらかき
にちやうのあさはやくからなずながゆ
はざくらややうやくからだもゆるやかに
さつきののるりこうのくさのかな

遇々 




千波御茶園の洋菓子店にて。

  遇々
まろにへのはなかげゆるるなかに入る
よそひきのよそほひのつまがゐて真珠日和
詩人の恋ところてんのやうなる暗喩かな
あんずの実こわかれすぎしつまのかた
しやくやくのおもたさうなるよあけかな

片陰にだれもが無口でゐたるかな
みなみかぜ菓子の包みが和田誠
鬼相場師駆つていよよ五月闇ぬけにけり
三高生と恋し女給は今も中町でみるくせいきをつくる
まろにへやくれいぼうやんとは嘘ばかり

まろにへやくれいぼうやんとは嘘ばかり
夏帽子欲に眼およげる農夫ゐて
まろにえや子わかれおへてやせたる日
まろにへやこわかれすみて静かなにちやう
しやくやくのおもたさうなるよあけかな
つくばねのみずこんこんと夏むかへ
まろにへやくれいぼやんと嘘ばかり
まろにえのしたふくかぜをまちにけり
まろにえのはなかげのかぜまちにけり
まろにへのはなかげ揺るるなかあるく
からももや子別れ過ぎし妻の肩
日をうみまろにへのしたをあゆむかな

2015年5月3日日曜日

遇々冬から夏へ



はるの句をあつめてにちやうくるるかな
 いつしかとはるの証もおとずれり
 しんちうの把手ののひかりやはるどなり
 はるのよかん あなたのそばの ここちよさ
 はる雪舟 さかのぼりをる ねこぜかな

はるかぜにともにふかれてゐたりけり
少年のぬかなでてゆくはるのかぜ
 かきわかば山女鮓をもらひけり
おくひたち食堂そろいてあずき祭
にちやうはひとのとおりのなくて春日

しらももや一片あげてゑがほかな
 くりますろうずははるや空き家かな
 ほんたうのいかりこそあれはるあらし
しらがゆの日々つづきけりはるどなり
春まつや蓼太に龍雨、万太郎

 玉のごとゆめはうせにしはなぐもり
夢さめてつかむとすれど春しぐれ
塀のむかふよりざぼん落ち来る校庭や
藍いろのゆめはうすきのままにして
くれそんの水をわけゆくはるひかな

蜜柑むくゆびの冷えや冬机
こころづもりあれこれとして宵節句
ひとしれずさせるゆふひのむかふ春
こころときほぐしかねける寒の雨
花冷えや杏所の晩年おもふべし

梅雨冷えやくちびるむすぶ決意かな
 ゆふかぜにゆるる里山辺の夏むかへ
 やまぐにのぶだう畑おりくるやまのかみ
花野きていてつく冬の日おもひけり
ゆふぐれのてつせんのいろむらさきや

鬱金香てにとるつまのむくちかな
 てきぱきとしたることなし春隠士
いしだんのくずれてもぬくし春隣
 嫌われて生きるときめて冬の梅
 銀化せる硝子白亜紀の層よりはる

梅雨はれま流れ踏み切りのむかふのむぎばたけ
古本屋てふせんみんにもはるたつひ
春雷にうたれてもゆる素ひ社
 北十字くれがたの園の秘密かな
ひさかたののどけくありてはるのみち

心平さんは象徴詩人だつたのか春硝子
こころなきことをまたはなぐもり
 あどばるうん信太郎のはるのそら
 どうせうもなしこどくのくせの二月かな
三月やおのずとしれるひとごころ

 はるの遊撃手ばっくはんどの軽きかな
 はる蕎麦屋はるのしょーるのわすれもの
新聞が開花と云ひてはだざむや
春耕や土こへてくる風あほき
 したしさやはればれと悪口をききにけり

れんぎやうやしとどにぬれてゐたりけり
 くさもちや春慶塗のうすさかな
 とどきをるゆうかんも冷え寒の雨
 春菜にてそらまめもにておぼろかな
 このみちや悉くはずれて二月かな

石榴われそのくれなひのゆふひかな
午睡終へまちすをひらく療養所
 春泥ややうをそだてたる河のまへ
 しゆんでひや筑波へのみちはるかなり
 ものの芽のわきたつやうなおくひたち

相場師ににほんばしのきのめだち
 したひらめ小麦まぶしていためけり
春昼やあるくもつかれしまひけり
くれがたのおしあひざまのはすのはな
 ゆふぐれのくもせばまりて暗くなり

石榴われそのくれなゐにゆふひかな
白秋讀むはるくれがたのうるほひや
春時計なりてごすいよりもどりけり
 ひなあられかくしもてゆく少女かな
初ひなやとこしへのさちおもひけり

 はつひなによばれてゆける座敷かな
 さるかたの聲うつくしききさらぎや
卯月やおべんとうもまたはなやいで
薄紅梅山名文夫はまだうれぬ
 うらのうめいひたきこともやまのやう

 きさらぎや里川のみずただすめり
 きさらぎやしかへしきつと竹の裏
紅梅やおちつくさきはいまだかな
 うぐいすやエプロン女子もひかへめに
 あめのなか観梅駅のきものかな

紅梅やおちめのときのだいじかな
空屋敷こうばひばかりはなやかに
発電所ともしてはるのさむさかな
 ぐずぐずとすることもなき二月かな
春寒やはつでんしよの灯しかな

 さびしさもそらのろもまたおなじかな
 しんとしていつまでもしんとして二月かな
ゆびしろし唇赤しにぐあつかな
 はり窓はこうばいいろをすいこめり
 むざむざとうしなひにけり寒の雨

ところてん春炬燵してゑがほかな
偽ばせを司書のこころねうつくしき
はるかぜや「美学」でがすとんばしゆらある
ひそやかにおもふもありてはるしょーる
 ひとりみにしらぬまつもるはつゆきや

 はるかすむつくばねのゆふながめかな
 つゆざむやひとやまこえもなんぎかな
 はなぐもりびぜんぼりにそふてゆく
ふうけひのなんとはなしのはるひかな
 かきわかばこつぜんとろうばいなくなり

 はるさめにわかれはとほくわすれけり
 もものはなかひもとめしはとなりびと
 はるかぜのいるにまかせむやまのむら
よもやまのはなしはつきぬひながかな
 もてるものうけいれなさいなきのめあめ

 はるかぜはさかかけあがりそらとくも
 あたたかなゆどうふのゆげむくちかな
 ふようさいてかぜもふえたりふほうあり
あさがほをそうといただくあさのみち
 さしてゐえうひのまぶしさよふゆごたつ

 わかばあめがいとうもまたぬれており
 たましひのぬけてしまへりはちがつや
 わかばあめのがしてならぬもののあり
はるかぜやまことにじてんしやしょうじょかな
 いまはただひあしのぶをまつばかり

 よそひきのははをなづけて真珠日和かな
 せつぶんやいくぶんひともよそよそし
宵宮へのれんのかぜにふかれけり
ゆふかぜのしずかにふいてひとをまつ
 みなみふひてきゅうかなづかひおぼへけり

 ながきひやたつたひとりでおしむかな
 ながきひやわきのこながれ透いており
 いしだんにまきちらしたる椿かな
なのはなのつきのみちすらいそぎける
 ながきひやかつてかへりしあんこもち

 おやしきがうりやとなりてなばなさく
 うめのめのかにおどろくこともありて
 みずうちてひとりひながをもてあまし
蜜柑むくそのてのこうのあかさかな
 こすもすといわしのくもとゆぐれかな

 なごしのひおほかぜもふきあけやすき
 ゆりのかでみちてゐるなりはなれかな
 りつしゆんやどこまでもそらあおきまま
かきのしぶもらひてはにぬることもあり
 ふゆのよをたうふにてふでおちつけり

 まゆだまをこねたるゑがほにひかれけり
 せつぶんやひとまちがほもはなやひで
 さきうみしこともありなんさくらばな
あどばるんいつつあがれりごがつぞら
うぐひすやひざのまろきをあいしけり

 さくらもちとほりすがりにわけにけり
 はなこぶしまちびとはここしらずやと
 もものはなあばれんぼうのやうにさき
 みくじひきさうとしまへるつむぎかな

 ゆふぐれをしずかにまてりいちぐあつじん
 いちぐあつもくれてあしたにのりおくれ
 みょうじゃうもさびしからずやいちぐあつじん
 たんじつやゆくりくうてるつまをまつ
 たんじつのもりそばふたつきゅうひゃくえん

 たんじつのらんちはいつもたぬきそば
 めつきりとしごととだへてかんのあめ
 しぐるるやすずのちやいれのひかりかな
 なのはなにさそはれみちのほそきかな
 たんせいなきじやのみせやきのめあめ

 しゃうじしめわらへるこゑのとだへけり
 はるにれもめぶきにけりなあめのごご
 うめのみちゆきてもゆきてもひとりかな
 あおうめのまろきをけふもたのしめり
 いずみてふうなぎやのまへとほりけり

 がつがいへむかふひもありはるのかぜ
 ぎんいろのみちとなりけりかんのあめ
 うめどきやくれがたのこゑとほくから
 はるかぜはそよふけぬけりうすひみち
 くれがたによびとめるこゑはるのよひ

立春やりりしくいきてゆきたいんですあたし
夕蘭のそのてのひらのやはらかき
 はるのゆきしなののそらもおもたかり
 せつぶんやすれちがふひともはなやいで
 ひなかざるやうなかたりをきくひかな
 にちやうのあさはやくからなずながゆ

 はんけちをするりとしまふはくしよかな
 こうじまでこぼれちるなりゆきやなぎ
 つゆふかしろじをまなべるびがくせい
 やまのみちどんどんゆきてみずひきそう
 はざくらのしたでむすべるやくそくや

 しなのにて
 はざくらややうやくからだもゆるやかに
 てつびんのごとんとおとすひとりかな
 つわのはなしたしいはなしすこしだけ
 さざんかをかきわけわけてくるこかな
 なつゆうひえのころそうにのこりけり

 なつおうてあらがらふともちからなき
 あさぐもりはすさけるみゆしずかなり
 あじさゐのいろのねるきてまつてゐる
 しやくやくがほぐれるやうにあさむかへ
 むぎのあきかいがんせんにちかきところ

 のにまじりいちごをつめるひもありて
しらつゆのしらたまのつゆたまゆらに
五月野の瑠璃光の草野かな
 なぞおほきみちしゅんじつのまがりなる
 あわゆきにつつまれてゆくあつこおと
 ふゆのうめにせものばかりにとうじんす

 ふゆのひのわかれもありてれくいえむ
 こなゆきにさえるがいきにきづきをり
 あたたかやかれあしのみちけふもまた
 はなぐもりそばやでかいぎひやざけも
 かぜたちておもひきるべしはなぐもり

 みずたまりはねかへすひのあたたかや
 つゆのよのみちはまつすぐにあらずとや
 しぐるるやきょねんのけふもこのいへに
 ふゆごもりこつぜんとしてしまひけり
 はてからはてへこざくらのさくふもとかな

 つうきんなどなくてえきのひあかあかと
 しゃくやくをさしておもたしせいじかな
 さつきののるりのひかりのくさのかな
れんぎゃうのうすきのかげのうらみかな
 ひあしのぶけふはもすこしあるかうよ
 かんとうにわすれさりゆくひとのかほ
 しみじみとふゆひのいりてふゆなにゆ
 かんきややゆるみしあさのしじみじる

 へつついによりてかかれるはるゆうひ
 うつろさんがつこころもそらになりにけり
 つきのしたあなたのこへだけひびひてゐる
 しぐれてもみずゆきどまるうらのみち
 きんいろのひとずじはしるかんのあめ

 たまゆらのしらたまのつゆこぼしけり
 ばろつくなるかみほほえめるはるのやしろ
 ゆふぞらにさはひでゐるかさくらかな
 うめどきもむらさきしきぶのこるかな
 たんばいこうだんだんとつちにうぞもれり

ふようさきつけもいただくつくばみち
 いしだんよりながめてとほきひのながき
 どんよりぬふゆぞらまもなくおはりけり
 かじかみてそのひととあふゆふべかな
 しようじあけいくぶんきぶんもうへのほう

 たんじつやだいくさんのたたくおと
 ふゆのあめあつかだれかがくるやしれぬ
 はるごたつこづかいみつつにわけにけり
 さむさうなさむそうなしょうじょにこえかけぬ
 がらすどをたたひてゑがおよざむかな

 ふゆぞらにつきぬけてゆくてらのおと
 みずぬるむだいがくのなかぬけてゆく
 はるしぐれさぬきうどんのなまぬるき
 きのはやひおぼろづきよとなりにけり
 しばらくはあたたかきかなてらのみち

 みへすひたうそばかりなるよざむかな
 ひざかりにしごとのありてうらやまし
 かすみたつひのつづきをりしばらくは
 しらぎくのかれのこしありにがつかな

にぶいろのすゐせんのすゐせんのはな
 にちやうのゆふぼさのばのはるおしむ
 ひかへめなあなたなるこゑはるのよひ
 しらつつじはるかぜはやくとほりけり
 がらすどをすくひかりありふゆひるま

 きょうしょながめしかしらやまかぜを
 かくざとうかいてうあかるしはくしょかな
 かくざとうとあなたのゆびをはるおしむ
 すてにはにけしもさうびもまつさかり
わがしやがしじんでありてひびうつくし

 あいひめもぬいひめもにがつのかごでえどにたつた
 はなのめのほぐれつつありやまのみち
 やまのとしむくちなはるのまつりかな
 たそがれもながくなりぬつかれかな














遇々


ここからさきは簡単ではないとどうそしんとごぐあつのそらが
あの日より緘口令つづいてゐて初かつを
いるか兆しひまらやでなゐ震れた春がきのふとぢた
めうろんの實すろうぴつちで放りたし
なにももたないでゐるはずるひ風光る
そでからなつかぜぬけて無一物とはかなし
けふでさまざまおはりにしたひと四月尽く
あけはなち太古のそらのごぐあつかな
あい姫もぬい姫も五月のかごでえどへたつた
このひざしでゆふうつを濯へ五月
夏安居こはくていかなひくせに修行者ぶりする
白ひ皿蓮にたとへしくりすますろうず
吉田一穂さんごぐあつがおうごん浪費してゐます

遇々

咲いてはいけないソムニフェルム種渥美芥子ひらく
村八幡咲いていけないソムニフェルム種繁殖す
異しきセティグラムひらいてをりぬ晩春に
赤玉生みておとめに化せぬ
さひていけなひセティゲラムひらくおいらくの夕に

咲ひていけなひ渥美芥子ひらくおいらくの夕に
帰化芥子さhiてあやしく犯さるる国土
東国があやかしの芥子に犯されてゐる
沿岸はいるか大漁地震警報発令す
沿岸はイルカの漁の春きたり

平然といるか食ひけり濱の夏
夏浜が地震の兆しイルカ大漁す
いるか大漁す沿岸地震を兆しけり
かなしみのいるかの大漁地震兆しけり
地鳴りするきざしなるいるかの春の大漁せり

地震前兆せるやいるかの春の大漁や
浜は夏なゐ震れきざすいるか大漁に
いるか大漁なゐ震れきざす浜は夏
かなしみのいるかうちあがりて濱は夏

ゆくはるやさてつのはまのたたーるじん
なつかぜがふひて八幡太郎きたをむく
つくばねのみずほとばしるごぐあつくる
しうまいをたっぷりたべて春惜しむ
あのころは春の電話混線ばかりなり
混線ばかりの春の電話のあのころの

春の灯に誘われしうまいたべにけり
春の灯のまへで思案すしうまい屋
ぽつねんとしうまい屋の春の灯や
ぽつねんとしうまい屋ありて春の灯や
しうまい屋春灯あかあか誘ひけり
春の灯のしうまい屋あかあかと誘ひけり
春の灯のぽつねんとして招きをり
ぽつねんと春の灯のある店に入る
日あたるところもあたらぬところも菜の明かり


立春やりりしくいきてゆきたいんですあたし
あどばるうんあがる信太郎のはるのそら
こころなきことをまたきく花曇り
ちちいろのこぶしのしたの憂鬱や
どうしやうもなひ孤独のへきのにぐあつかな

あけはなちごぐあつの風をまちにけり
くさもちの春慶塗のうすきかな
相場師ゆく馬喰町のきのめだち
柿わかばこつぜんとろうばゐなくなり
なつかぜのゐるにまかせむ坂かけあがる